玉川ハウジングHPへ戻る

« ガス中毒 | メイン | 脱 ウサギ小屋 »

2007年01月24日

クリント・イーストウッド

「硫黄島からの手紙」を観た。予想より重く、体調が悪いときには観ないほうが良い。
内容の前に、ちょっと。

イーストウッドは、中学時代にTVで「ダーティ・ハリー」を見て以来、自分の唯一の
ヒーローだった。正確には映画の中でイーストウッドが演じる役柄が、というべきか。

「荒野の用心棒」「ダーティ・ハリー(特に1,2作)」「アウトロー」「戦略大作戦」から
「ガントレット」「ダーティ・ファイター」「マンハッタン無宿」「アルカトラズからの脱出」
「シークレット・サービス」・・・・どれも、型破りの、一匹狼で、権力なんかくそ食らえ的
な、男が惚れるヒーロー像だ。アカデミーとかの映画賞とも無縁で、ノミネートさえ無
かった。

違う役柄をしだしたのは、「マディソン郡の橋」あたりから。 「許されざるもの」で、初
めてオスカーをとった時、マスコミが「念願の」なんて書いてあったが、昔からのファン
からしてみれば、オスカーの方が、イーストウッドに近づいてきた様な感じだった。

ずっと、イーストウッド=ヒーローの図式が定着していたが、彼の監督作品には意外と
当てはまらない。むしろ人の弱さや喜び・悲しみに重きを置かれた人間ドラマが多い。
この傾向は晩年になるにしたがって強くなっていく。銀幕の中のヒーロー像を、プライベ
ートまで追い求められていた身にとって、それからの卒業の意味と、そしてもっと人間
的なものを作りたくなったというのは、想像に難くない。

そんな彼だから「硫黄島2部作」を造った意図も、描き方も納得だった。戦争の虚しさ、
愚かさ、恐怖、そんなものが、リアルな戦場描写から伝わってくる。又、主人公の栗林
中将は、冷静沈着な判断で優れたリーダーとして描かれているが、決してヒーローでは
ないし、むしろストーリーは一等兵の視点から見ている方が多い。だから観客は、それ
ぞれが自分なりにこの映画を消化し、感動・怒り・戦争の虚しさ・命・家族などについて
再考し、それぞれの思いを持ち帰ることができる。

アメリカ人であるイーストウッドが、日本人の戦争映画を丁寧に造ってくれた事に、感謝
の念を感じずにはいられなかった。


投稿者 tamagawa : 2007年01月24日 19:35

コメント